ペンギン的知識からの脱却 – 山口英文法講義の実況中継

英語学習を始め本屋の英語学習コーナーに定期的に行くようになると分かることがあります。
それは日本には英語学習本は膨大な数がありしかも毎年続々と新刊が発行されているということ。
近所の本屋の英語学習コーナーも平積みが毎度のように様変わりしています。
買うのを迷ってるともう次行った時にはどこに行ったかわからなくなる本もけっこうある。

そんな中、驚異的なロングセラーは存在します。
1980年代半ばに初版が出版されたというこちら。




しかも未だに大型書店では平積みされているし小さな書店でもだいたい置いている。
英文法の定番フォレストが1999年に初版、あのDUOですら初版は90年代半ばですからこれはもう記録的と行っていいロングセラーです。
まあリファレンス的な本は共著だったりして新しい著者により改版されていく場合もあり、それほど初版が古いのが珍しい訳ではないんですが、個人の執筆でこれだけのロングセラーは少ないです。
英文解釈のバイブル的な伊藤和夫氏の英文解釈教室など他にもありますがやはり名著って言われてますね。

まあなにがいいたいかと言うとこの山口英文法講義は間違いなく良書と思っていいだろうとこの時点で想像できるわけです。
完全マップの森沢さんの推薦からは漏れていますがやってみたの中の人もやはり通読してますね。
という訳で英語学習する人なら通読したほうがいいのではないでしょうか。以上。
ではつまらないので一応通読2周目の自分が感じたポイントなどを簡単に。

この本の特徴

やってみたの中の人はこの本の解説に以下を引用しています。確かに今となってはわかりやすい。

フォレストで大学受験英文法をある程度把握できたら、『山口英文法』の通読は必須ではないでしょうか?それだけのインパクトがあります。勘違いレビューが見受けられますが、これは、英文法書というよりは英文法解説書であり、「他の英文法書で身につけた公式的知識をどのように展開して柔軟に解釈するか」を学ぶ、英文法系英文解釈本です。最大の売りは「助動詞」や「比較」や「否定」のセクション。英文法の感覚が体得できるまで読んで、凝り固まったペンギン的思考から脱却すべし!ま、3・4回ほど読めば用無しでしょう。用無しになってください!(笑

Sacred Journey – 英語達人を目指す英語力向上方法

いい本だからフォレストが終わったら読めばいいのかなという感じでしょうか。
ただペンギン思考とは?
これは買って読めば分かるんですが本文に出てくる著者の例えのことです。

ペンギンは海中に泳ぐ魚は捕えますが,氷の上に打ち上げられた魚には気がつかないそうです。ある状態では理解できても状況がちょっと変わるとわからなくなる,それを私は「ペンギン的知識」と呼んでいますが, 「熟語」とか「公式」とかいって機械的な暗記ばかりに頼っているとペンギン的知識にとどまる危険があります。

の部分のこと。非常にこの本の特徴を表していると思います。
上記「Sacred Journey」にも触れられている通りこの本は解説本です。
フォレストで「こういう場合は英語ではこういう表現を使います。」と書かれてるところのなぜ?を解説してくれます。

これは本当に救われます。中学英語に比べて量が膨大でなおかつ運用パターンも多い高校英文法をフォレストを進めるに連れ絶望していた自分としては福音と言って良い解説です。

「もう覚えるしかないのか…。あ、でもまた違うパターンが…」と絶望していた部分が極めて明快に説明され、しかも講義調なのでわりとスラスラ読めます。

ただ網羅性はありません。仮定法・関係詞・助動詞など一般的な項目別の講義ですが基礎の説明はすっ飛ばして進んでいきます。受験生(英語学習者)が陥りがちなポイントに絞っての解説です。
某有名ブログで高校英文法はこの本一冊でオッケーだみたいな記述がありましたがそれは英語が得意科目で東大レベルを軽くこなせたような人じゃないと無理じゃないでしょうか。

基本的にこの本は受験生に向けた講義をまとめた本です。
要は高校英文法を習い終えた高校3年生および浪人生が受験対策をするための講義です。
「高校英文法知らないけど教えてくれ」という人に向けた本でもありませんし「この言い回し知らないからリファレンス的に引こう」などという類の本ではありません。

もう一点個人的にいいなと思ったのは著者があまり理想主義者じゃないこと。リアリストです。
理解すべきところは理解、暗記すべきところは暗記ときっちり指示してくれる。
「理解すれば英語に暗記なんて必要ないんだよ!」なんて無責任なことは言いません。
例えば我々が外国人に「『腹が立つ』ってなんで怒るって意味なの?」と聞かれたらどう答えればいいでしょうか。
「立つには『角が立つ』とかトラブルみたいなイメージがあって…」とまでは言えたとしても「なんで腹なの?頭とか心じゃダメなの?」と言われると「そういうもんだから音読でもして覚えな」としか言えませんね。
まあイメージしたり理解するのも重要ですが最後には覚えなければいけない項目と言う箇所は言語なんですから確実に存在します。
それを身体で覚えるためにしつこいほど音読をやってるわけですから。
という訳でこの本は理解と暗記の線引が非常に優れていると個人的には思います。

まとめると分厚くなりがちな高校英文法との参考書の中で、基礎の解説を捨てる・勉強中ハマりそうなポイントだけに絞って徹底的に解説するという点が未だこの本が色褪せないポイントだと思います。
しかもターゲットを大学受験に絞ったことにより学習者が陥りやすい点に解説が集中している。
受験英語に絞ったのにかえって普遍性を持ってしまったというのがなんともおもしろいところです。

いつやるか

恒例いつやるかなのですがやはりタイミングが非常に重要だと思います。
参考書買いの私ですから早期にこの本は入手しておりさらっと読んでみましたが、中学英文法が終ったばかりではまったくの意味不明でした。
「一億人の英文法」の後にも少し読んでみましたがこれまた微妙な感触。
で、フォレストと問題集の2周目が終わったあたりに読むとジャストな感じで「これこれこういうの欲しかった」と相成りました。
これより遅くてももったいない気がします。現在進行でルールを覚えるのに躍起になってる解説がまさに載ってるわけですから。
この本の口コミを検索すると合わなかったとの感想の方も居ますがだいたいが、この手を付ける時期を誤ってるような気がします。
講義調なので頻繁に「もう簡単でしょ?」「みなさんならわかるはずです。」みたいな言い回しが頻出します。
ただこの講義はAランク大学の入試問題を解説してますし、相当タフな基礎力がないと初読ですべて理解するのは困難です。
現役バリバリのAランク大学の受験生への言葉を真に受けて心折れないようにしましょう。
「Sacred Journey」でもやってみたの中の人も3回通読を勧めていますね。
要は1回目は半分から7割ぐらいわかる程度でいいのではないでしょうか。
またもう完全に上がりと言うか高校レベルの英文法を克服した人にとってはこの本の「受験対策」の匂いが鼻につくようです。
もともとが受験参考書ですからね。ひっかけ問題への対策とか、こういうのが入試に出されやすいみたいな社会人には関係ないと思う説明もあります。そんな気にならないレベルですが。
社会人や大学生なら受験でよく出題される問題より日本人が英語を学ぶ上で陥りやすい問題に焦点をあてて欲しいですからね。
まあそういう高レベルの人のことは私ごときが考えてもしかたがないので止めにします。
ただそういうレベル以前の人は受験臭など気にせず読むことをオススメします。
別に受験英語という別の英語があるわけではありませんし、何より英文法でハマるポイントは受験生だろうが社会人だろうが同じだと私は感じました。

私なりの勉強方法としては高校レベル英文法の問題集1冊目のの2サイクル目が終わってから併読しています。
なぜ2サイクルかというとそれぐらいは最低やって高校レベル英文法の概要が頭に入ってないとこの本の真価が発揮されないからです。
いくら陥るポイントを解説してくれたとしてもまず陥らないと頭に入るわけ無いですよね。

あとはマップで提唱されている「文法問題集は最低でも5サイクル回す」間に併読する形です。
同時にやるのは解説書という性質上実践が必須なので「山口英文法→問題集」という「理論→実践」で身に付けるため。
この本は全60章とかなりのボリュームがありますので5サイクルの間に3回通読は十分すぎるほどボリュームがあります。
高校英文法の問題集を2冊やる間に併読でもちょうどいいかもしれません。
なにより文法問題集ばかりだと英語の勉強に無味乾燥さを感じてしまうものです。
この本はそういう文法学習に少しばかり色を添えてなおかつためにもなる良書。
ただ繰り返しますが高校英文法問題集の2サイクル目ぐらいすんでからにしましょう。
フォレストに載ってるレベルの知識が定着はしてなくても、見たことがあるレベルにならないと意味不明なだけです。
また問題集が終わってからの通読では、理解は出来るでしょうが実践が足りずせっかく理解した内容が定着せず流れてしまう恐れがあると思います。

実は1冊バージョンがある

おまけとして、この書籍は上下巻セットでわりと粗めの紙でいかにも「受験生が持ってる実況中継シリーズ!」っていう外観です。というかこの本が実況中継シリーズの先駆けなんだから当たり前ですが。
ただ意外と知られてませんがこの本実は一冊に統合した書籍が存在します。



内容は全く同じで全60章漏れ無く入ってますのでご安心を。紙質も随分良くなってる。
値段はほとんど変わりませんが1冊で持ち歩けるメリットは大きいです。
出先で通読する際は特に「何章の講義を参照」みたいなときにどちらかの巻がなくて歯ぎしりせずに済みます。
またオッサン目線で言うと実況中継シリーズよりは気楽に外で開けるデザインではあります。表紙にTOEICとか書かれてあるし。

他に違いを上げるとすれば持ち運びはTRY AGAINのほうが便利だが実況中継のほうに何故か索引があるということぐらいでしょうか。
まあ買って随分立ちますけど索引を引いた記憶がないですけどね。
だいたいもう一度あそこ確認したいと思ったら章ごと読むのがふつうなので。
あと外見問わず1冊ずつ持ち運べば実況中継の方が軽いってのもあるかもしれない。

まあ結論から言うとどちらでも好きな方を買えばいいかな。
私は上下巻を買ってから気づいてTRY AGAINを買い直したという甘酸っぱい記憶があるので一応書きました。

それでは。


コメントを投稿する